SHIBUYA、東京勢で唯一の8強進出
写真:後半にPKで同点ゴールを決めるSHIBUYAの宮崎。
【関東大会1回戦】HCS 1-1(PK13-14)SHIBUYA
実質的にほぼ大学生チームであるHCSフットボールクラブに対し、SHIBUYA CITY FCは社会人のチームとは思えない躍動感でキックオフの瞬間から互角の勝負を演じた。強度の高い球際の競り合いと、互いのゴール前をダイナミックに行き来する10分間の攻防。この序盤を0-0のまま過ごすと徐々にゲームが落ち着いていく。
システムはミスマッチ。初期配置を当てはめるとHCSのアンカー山本が浮きがちになるものの、SHIBUYAの2トップが代わるがわるマークをすると特に脅威にはなりえなかった。逆に2トップがHCSの最終ラインに対して仕掛けていくとSHIBUYAのペナルティエリア進入が相手の攻撃姿勢をある程度鈍らせる。戦術的な部分では優劣がつかず結果的にピッチの全域で拮抗したが、前半終了間際の46分、FW登の強烈なミドルシュートで唐突にHCSが先制。SHIBUYAは反撃の機会を与えられることなくハーフタイムに入った。
しかし後半はSHIBUYAが奮起。「まだ45分ある」「まだ30分ある」と声を掛け合い、落ち着いて試合を進めていくと、しつこく繰り返した仕掛けが実ってPKを獲得。これを後半36分にMF宮崎が決め、とうとう1-1の同点に追いついた。
こうなると勢いはSHIBUYA。90分間を1-1で終えたあとのPK戦は共に5人目が失敗。そのあとは全員が成功し、1周目で失敗した選手の2度目に当たる15人目のPKで決着した。HCSのDF鈴木蓮のシュートをSHIBUYAのGK峯が左に飛んでストップ。そのウラではベテランの左サイドバック阿部が2度目を成功させ、14-13という長丁場のPK戦を制し、SHIBUYAが東京勢で唯一となる8強進出を果たした。
戸田HC「今日はこちらに運が転がってきてくれた」
「志をもって、勇敢に、大胆にプレーしよう」。戸田HCは試合前、選手たちにこう語りかけ、今季やってきたことの継続を説いたという。そしてハーフタイムには「それが足りていない」と指摘した。
ゲームへの入り方そのものは悪くなく、高いテンションで臨めていた。しかし相手の背後を衝こうとする段になると、緊張のせいもあるのか決断が鈍る。戸田HCはプレスの欠け方や運び方など具体的にフットボール的な側面で修正をかけながら、けが上がりで温存していた宮崎を後半に投入、やや不足していた勇気を補い、同点弾、そしてPK戦の勝利に結びつけた。
「最後は団結。もうワールドカップそのまんまです(笑)。日本の戦いについては選手によく話をしていたんですけど、戦術とか技術ではなく団結ですね。チームとして勝利に向かって努力する姿を参考にしようと言っていた。最後は(PK戦は)運がないと勝てないですからね、今日にかぎってはこちらに運が転がってきてくれてよかったと思いました」。
ヒーローとなったGK峯は「1本1本で一喜一憂しないようにということをすごく意識しました」と、PK戦を振り返った。勝敗を決する1本となった15人目は「1本目に外しているキッカーなのでメンタル的に自分が優位に立てている」と思いながらコースを当てて仕留めきった。ウラのキッカーは阿部。プレースキックやクロスの名手として知られるだけに、2回連続の失敗はないはずだという確信が自信につながってもいた。
後半の時間帯、フィールドプレーヤーを落ち着け、じっくりとこれまでやってきたサッカーを表現するようピッチ上でマネジメントしていたのも峯だった。「0-1だからと言って変に前がかりになったりチャレンジすることで2点目を獲られるのが嫌だった」。0-2にしたら試合を覆すのは難しくなる。冷静なマインドを保とうと心がけた守護神の気配りが、初戦突破の遠因となっていた。
(後藤勝)
関東社会人サッカー大会 1回戦
- HCS 1-1(PK13-14)SHIBUYA
【得点者】
45+1分 登 幹介(HCS)
81分 宮崎 泰右(SHIBUYA)
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