池上監督が起こす変化で前向きになった武蔵野
写真:後半勝ち越しゴールをヘディングで狙う武蔵野のFW田口。
MATCH REPORT後藤 勝
<JFL:クリアソン新宿 1-1 横河武蔵野FC>
6月8日のアトレチコ鈴鹿戦を最後に、その翌節以降7戦に渡って勝利がなかった横河武蔵野FCは何かを変えなくてはならないと、9月15日の栃木シティFC戦から指揮官を交代。石村前監督から指揮権を引き継いだ池上監督率いる武蔵野は、その初戦こそ栃木に敗れたものの翌節は引き分けと結果が好転、前節はブリオベッカ浦安に10試合ぶりの勝利を収め、チーム改造の行方が人々の耳目を集めていた。
リーグ戦も終盤に差し掛かり、4-4-2でビルドアップする石村前監督のスタイルからそうかけ離れた変化は出来ない。しかし、やはり好調に転じているクリアソン新宿と引き分けという結果になった最新節を観る限り、以前よりも相手ゴールへとダイレクトに向かうような意識付けがなされているように映る。
「おっしゃる通りで、以前はボールをつなぐことでのリスクがあり、引っ掛けられて失点するということが結構あった。そのリスクを減らさなきゃいけないなということで、つなぐところもつなぎ過ぎないように、出来るだけ自分たちで前を向いた時に、フリーでボールを蹴れるんだったら前を狙う、ということをこの4週間ぐらいで意識してもらった」
なかなかすべての時間帯で自陣からボールを遠ざける状態に徹することは難しく、このクリアソン戦でも後方のゾーンを使ってプレーをした流れから失点してしまっている。しかし基本的なベクトルを前に向け、積極的にプレーすることでメンタル面も含めて前向きになっていることは間違いない。この日も序盤に攻勢をかけてきたのはクリアソンのほうだったが、前半13分に先制点を奪うと、以降はしばらく武蔵野ペースになっていた。
惜しむらくはその時間帯に2点目を獲れていれば勝利すらありえただろうということだが、ペースを奪い返されて失点したあとも2失点目を喫するまでには行かず耐え凌ぎ、引き分けに持ち込んだところに成長の跡がうかがえる。
「少しでも失点のリスクを減らすように、選手にはシンプルにプレーするようにということを要求している。あとは強度。JFLで戦うにはそれなりの強度が必要で、今日のクリアソンさんも、前も向けないぐらいしっかり(高い強度で)来るので、今日の試合で当たったぐらいの強度で練習も取り組んでいる」
この試合では激しい球際の攻防によって熱くなった選手同士が衝突しそうになり、チームメイトや審判が仲裁に入るシーンが目についた。それほど両クラブとも、ハイインテンシティを意識し、本気で試合に臨んでいるということ。残留争いの一戦ではあるが、それだけの熱量でプレーをしているからこそ、充実した内容になったのだろう。
ハーフタイムでの3枚替えも印象的だった。同点はビハインドと同じ、勝ち試合の流れでなければ勝つ方向に持っていくために流れを変えたほうがいいという判断か、SB杉山、MF小野寺、MF今村をベンチに下げた。1点目のアシストの場面以外にもいいクロスを上げていた杉山を下げた背景には彼がイエローカードを1枚提示されていたこともあるが、それにしても思い切った決断だった。「そこも選手たちの競争だと思っている」という池上監督の考え方が、チームを活性化させている。
「ビッグピンチがあって負けなかったというのはポジティブに捉えたい」と、池上監督。土壇場であがきつづける一つひとつの工夫が、武蔵野を前へ前へと転がし始めている。
(後藤勝)
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