政森、FK決勝点 練習で失敗のトリックが本番で成功
写真:後半に好位置でFKのチャンスを得たSHIBUYA。
MATCH REPORT後藤 勝
<関東大会準決勝:SHIBUYA CITY 1-0 FIFTY CLUB>
SHIBUYAの決勝進出を決めたのはセットプレーだった。後半25分すぎに相手陣ゴール前中央でボールを運んでいたMF植松がファウルを受け、直接フリーキックをゲット。これを政森が決めたわけだが、その内容が凝っていた。
1人目がシュートのフェイントをして左に流れ、2人目が左足のつま先で軽くボールを蹴って右に転がし、それを3人目がフィニッシャーとなって決める。この最後の一撃を政森が担った。ネットにボールが突き刺さると歓喜が爆発。サインプレーに加わったMF水野(雄太)がSHIBUYAベンチに走ってくると、その他の選手たちがあとにつづいた。
このフリーキックは事前に練習していたが、一度も成功しなかったものだという。それを本番の試合で、一発で決めた。勝ち抜くチーム特有のミラクルであったのかもしれない。
「昨日、一昨日かな。練習したけど1本も入っていなくて。けど、オレが『蹴りたい』と言ったらみんなに『(政森)トキくん行って』と言われて、じゃあやろう、と」
練習のキックでは枠すら外していた。複雑な手順をデザインした上で正確に蹴るのは、通常のキックとはまた別の難しさがあるのだろう。しかし政森、水野雄、DF岩沼、MF宮崎らが集まって話し合い、成功の確率を高めたことも見逃せない。
この得点につながった“トリック”を用いるパターンを含めてどれで行くかという相談のほか「選手交代で人も変わっていて事前の練習をやっていない選手が出たので『こうやってやるんだよ』という説明も」(政森)したという。
この得点はセットプレーによるものだったが、決める手段の如何を問わず、今大会の政森はフィニッシャーにより特化した姿が目立っている。
役割分担を徹底したこともあるのだろうが、政森はここまでの3試合、ひたすらストライカーとして責任を果たそうとしていた。この試合でもセットプレーで得点が決まるまで、SHIBUYAのシュートはほとんど政森によるものだった。「割り切っているというか、1トップで自分が前を向いたら常にゴールを狙うし、 ゴリゴリ、ゴリゴリ行く。いまノっているし、まあ、ノっている間に行っとかないと、ていう感じ」と、ラッキーボーイ的な存在になっていることも自認している。
SHIBUYAの目的は決勝進出ではなく、あくまで優勝。それは「始まる前から言っているし、リーグ最終戦でEDOに負けた時から思っていること」だ。
「自分はプレッシャーに強いんで。だから明日もたくさん応援に来てくれたら、絶対点を獲るので来てほしい。まだ誰が出るかわからないけれど、明日も点獲ってヒーローになる」
どこまでも頼もしい政森。東京を二分するEDO ALL UNITEDとの闘いでも、背番号9の力は欠かせないものになりそうだ。
【後藤勝】
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