東京サッカー [TOKYO FOOTBALL]

COLUMN

シリーズ展望「東京社会人サッカーの未来」Vol.03

社会人の「矜持」。Intel Biloba Tokyoの挑戦 - 01

|後藤勝(ライター)|コラム一覧

Intel Biloba Tokyo


近代フットボールの原点に近い社会人リーグ

 もう記憶の彼方に去りかけているが、4月に欧州スーパーリーグ構想が発表されるや否や、即、頓挫したのはサッカーの歴史に残る出来事だった。巨大さゆえに開催地が苦しみ続けるオリンピックを見てもわかるように、スポーツの世界はグローバル化と商業化が極まっている。なかでも、スーパーリーグはあまりにピッチ外の要素でのみ成り立つ存在になってしまっていた。既存の大会が曲がりなりにも地域のフットボールと地続きであったのに対し、巨額の投資で閉じた大会になっていたことが、ほぼ全方向から批難を浴びた理由だろう。

 パンデミックによって世界の往来が難しくなっていることもあり、スポーツやサッカーのある暮らしに対する価値観を考え直す時期に来ているのかもしれない。

 そもそもサッカーの始まりは、パブリックスクールで各自、ある種乱暴な側面を孕む中世からのフットボールを保存していたところ、学校の改革とともにまっとうな近代スポーツとして制定し直したもの。人格形成に役立ち、フェアプレーを尊び、余暇に楽しむためのものだった。最初のルールもパブリックスクールの卒業生が集まり決めていった。

 この経緯を思えば、体育会出身のプレーヤーが就職し、その余暇に集まり大会を運営しピッチに立つ東京都社会人サッカーリーグは、近代フットボールの最初の理念に近い。大規模予算や商業的な思惑に振り回されることなく、人生を充実させるために、日頃は自分のクラブや身近なクラブに携わり、大きなクラブや代表の試合をやや引いた眼で観る。サッカー好きな欧州市民のあり方に近い状態が出現していると考えていい。

 ただ、JFLにJリーグを目指すクラブが増えるとそこが一杯になり、地域リーグでも収まりきらないとなると、そうしたクラブが常時、都道府県リーグの1部に存在することになる。加えて近年、大学が社会人リーグ向けにチームを編成し大会に参加するケースが増え、東京都リーグ1部も、企業クラブ、大学クラブ、Jを目指すクラブで多くを占められるようになってきた。

 つまり、ほぼ会費で活動費を賄い、余暇にサッカーを楽しむ社会人同士が、同じ土俵で相対し、グラウンド内の努力のみを競い合う環境ではなくなっている。しかし社会人にとって90分で戦える都リーグ1部は晴れの舞台。ここでのプレーを諦めたくはない。

 こうした状況で、2021シーズンの1部に出現したクラブがIntel Biloba Tokyoだ。前身は東大ユナイテッド。現在のクラブ名の一部「Biloba」はいちょうの意味でありここに東大をルーツとする名残があるものの、現在は直接の関係がなく、純粋な同好の士の集まりと言える。

 このIntel Biloba Tokyoがいかにして2部から1部に昇格出来るようなクラブとなり、どのような体制で1部に臨んでいるか、それはどの程度通用するのかがわかれば、多くのアマチュアプレーヤーにとって有益だろう。そこで本項では、彼らの成り立ちから順を追って内実に迫っていく。

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