東京サッカー [TOKYO FOOTBALL]

写真:失点を重ね呆然とするエリースの選手たち。

東京都社会人サッカーチャンピオンシップニュース

南葛のスキルに驚かされたエリース、思わぬ大量失点

写真:失点を重ね呆然とするエリースの選手たち。

MATCH REPORT後藤 勝

<東京カップ2次戦決勝:エリース東京 2-5 南葛SC>

 得失点差+29、2位のヴェルフェ矢板に9ポイント差をつけての関東リーグ1部昇格を果たしたエリース東京FC。その2023シーズンに磨いてきたアタッキングフットボールの驚異的な一面が、東京カップ2次戦決勝戦に於ける南葛SCとの激闘で垣間見えた。

 エリースも南葛も、ボールを隠しあるいは晒す個人の技術に長け、強気で運び攻め入ることが出来る選手ばかりが揃っている。盾も鎧もなく剥き身の真剣で斬り合っているような、この撃ち合いは非常にスリリングだった。選手起用も含め、リーグ戦を前にしてテストの側面もある。最終的にスコアがどうなるか読めないゲームであったことは間違いない。

 1レーンずつ適切なタイミングでボールを動かし最終的にフリーな味方をつくっていく精度の高いパスワークによって、一定の頻度でチャンスを生む。この戦いをしていけば、前半2得点を挙げたエリースならば、後半に同じだけの得点を挙げることは可能だったはず。実際、2-2の同点に追いつかれた直後の後半11分には、左サイドから右サイドへとラグビーのように展開したあと、FW唯井が対角の左隅を狙うもわずかに外れるシュートがあり、15分には替わったばかりのFW濱口のシュートがクロスバーを叩き、17分には唯井とFW神田がワンツーでつないでフィニッシュになりかけた。

 しかしこれらが得点に結びつかず、そのあと南葛の側が3得点を挙げた事実が、南葛との差をあらわしているのかもしれない。山口監督が「失点場面だけがもったいないかと言われると、自分としては全体的に差を感じた」と言うように、個々の少しずつのスキルの差が、最終的にスコアの差となってあらわれたのだろう。

【ハイライト】エリース東京 2-5 南葛SC

 後半の途中から、エリースの選手たちは適切なタイミングでボールを動かすことが出来なくなり、自分たちのスタイルを維持出来なくなった。そこが勝敗の分かれ目だった。山口監督はこの内容に1部との差を感じていた。

「前半に関しては、お互い多分この試合で試したかったことがあり、ベスト中のベストで臨んだかというと、8割5分から9割ぐらいのメンバーで臨んでいたというなかで、対策も含め、噛み合わせが悪くなってしまった部分はある。ただ、関東2部から上がってきて一番差を感じるのが、後半のオープンになったところでのクオリティ、それから強度が落ちない部分。そこは、関東1部はレベルが高いなと感じていた。 前回の東京ユナイテッド戦でもすごく同じことを感じたが、ここはぼくたちがもっと後半の戦い方のところで(1部のレベルに)適応していかなきゃいけない」

 山口監督は「2失点目がすべてだった」と、後半を振り返った。

「後半の前半ぐらいまではウチのペースで3点目が獲れていれば、という部分はあったが、2失点目を食らって焦りもあり、そこで一貫性が保てなくなり、攻め急いでしまって守備の時間が長くなるところはあった。ただ、これも結局のところ相手のクオリティが高いからこそ、ちょっとしたほころびが大きく出ていると感じた」

 おそらく、今シーズンの関東リーグ1部はVONDS市原と南葛、そしてこのエリースを中心に上位を争っていくことになる。その“本番”と、JFL勢と戦う代表決定戦を前に、カップ戦というかたちで関東1部のレベルを体感出来たことは収穫だったはず。スキルフルな南葛の選手たちと対峙して面食らい、点差が開いてしまったが、大敗するほどのチーム力の差はないはずだ。ここで“ダメ出し”を済ませたエリースがシーズン中にどのような逆襲を見せるのか。むしろ、ここからの成長が気になる負けっぷりだった。

春の腕試しは無限の伸びしろを感じさせる風間南葛に軍配

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