東京サッカー [TOKYO FOOTBALL]

COLUMN

シリーズ展望「東京社会人サッカーの未来」Vol.03

社会人の「矜持」。Intel Biloba Tokyoの挑戦 - 05

|後藤勝(ライター)|コラム一覧

Intel Biloba Tokyo

シーズン中の積み上げ

 大学サッカー部などがほぼ毎日練習する機会を確保しているのに比べ、企業のサッカー部でもない社会人クラブチームの活動は週1、2回。チームとして積み上げていくスピードがゆっくりになってしまうのは仕方のないことだ。これはもちろん、1部にチャレンジしてきた多くの社会人クラブが通ってきた道でもある。練習の機会が少ないのなら、試合で相手に対応し、何かを発見し、試合のなかで己を鍛え磨き上げていく必要がある。多淵代表も、一年目の1部挑戦を振り返りこう言っている。

 「強度の高い試合をこなすことで、開幕の当初から比べるとみんなが成長してくれていると感じます。その都度大事なことを話し合い、日々改善していく。みんなが真剣に取り組むことで、週1回の活動でも、ある程度チーム力を伸ばせると感じています」

 9月17日、東京都社会人サッカーリーグはすべてのカテゴリーで2021シーズンの降格なしを決定した。しかしこの秋までの厳しい戦いが、1部初挑戦のIntel Biloba Tokyoにとっては貴重なレッスンとなった。

 「どのチームも実力が拮抗して、どう転ぶかわからない試合ばかりです。ボタンをひとつかけちがえるだけで、そこを衝いてくるチームばかり。その厳しさに飲まれ、1部に昇格してもすぐ落ちてしまうチームが多いと感じています」

 毎日練習をしているチームは敗戦後、次週の立ち上げの練習で気持ちを切り替え、次節に向けた準備を進めていける。しかし活動が週1回のチームは敗戦のショックを一週間引きずりかねない。引きずらず、かと言ってチームづくりをぶつ切りにするわけにもいかないので、敗戦に学ぶべきところは学ばないといけない。ここの手綱をどう捌くかに最も気を遣うという。

 「2021シーズンの1部は試合数が多く、ひとつのチームが数週間連続で週末、公式戦に臨むというケースもありました。我々は順調に消化を出来たほうなんですけど、それでも3週間連続で公式戦があるとなると、試合に出ている選手は成長の機会にもなるしいいのですが、スタメンではない選手、サブ組やメンバー外になった選手は、まったく試合に絡めないまま一カ月くらい時が経ってしまうことがあるんです」

 都リーグは基本的には年間のスケジュールにゆとりがあり、各クラブとも、試合のない週に練習を組み込んで先発以外の選手も含め全員で試合の反省も活かしつつ向上していくことが出来る。しかし毎週末が試合で埋まるとそのセッションが失われ、先発以外の選手はプレーをする機会が不足してしまう。

 そこでIntel Biloba Tokyoは公式戦の前日に練習試合を組み、サブ組で臨むことで活動量を補った。加えて、課外活動も補完の役に立った。

 「平日の早朝6時台に23区内のグラウンドを確保して、フルコートを楽しんでいる有志のグループがあり、そこにチームのメンバーも可能な範囲で参加しているんです。そこで近いポジションの選手同士がコミュニケーションや会話の場を持てると共通理解が進みますし、それを全体にフィードバックすることも出来る。全員ではないにしても、そうした遊びの場ではあっても、チームの人間同士で話せることは大きいかもしれないと思いました」

 基本週1回の活動と定めている社会人クラブであっても、手を尽くして公式戦とは別に練習試合を組み、また日頃の空いた時間にボールを介した接触の機会を持つことで、1部の水準に対応するための時間をつくれる。これはひとつの発見だった。

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