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写真:盛り上がりを見せた西が丘でのクリアソン公式戦。©Hironoshin.F

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西が丘の夜に見せた“Jへの可能性”

盛り上がりを見せた西が丘でのクリアソン公式戦。©Hironoshin.F

Column後藤 勝

 クリアソン新宿は6月30日にJ3クラブライセンスの申請書類を提出した。JFLクラブのJリーグへの加盟要件は9つあるが、なかでもJ3クラブライセンスを維持していること、ホームゲームの1試合平均観客動員数が2,000人に到達するよう努力していると認められること、JFLでの順位が1位または2位で入れ替え戦に勝利すること、これらの3つが特に重要だ。したがってJ3クラブライセンスの取得は必須である。

 そのうえで、Jリーグ加盟に当たりホームゲーム開催会場としてホームタウンの新宿区に所在する国立競技場を使用出来るというメリットが大きい点は言うまでもないが、であるからこそ、日頃どれだけホームゲーム会場に賑わいをもたらし、またJリーグで戦えるだけの競技力を身に着けようとしているかが重要になってくる。その意味で、重要な試合と位置づけた7月23日の沖縄SV戦はひとつの試金石だった。

 会場は味の素フィールド西が丘(北区)。J2の試合が開催された実績があり、多くの観客を収容出来るスタジアムでもある。そして沖縄戦に集まった入場者数はクリアソンの丸山代表が設定した目標値の2,000人に、わずかに8人満たない1,992人。浴衣または甚平を着用すると入場無料という施策の恩恵もあったにせよ、Jリーグがイメージする、あるべき賑わいを体感出来た。

 試合開始の1時間前ともなると、キッチンカーが集まった“屋台村”は多くの人々でいっぱいになっていた。各々のキッチンカーには列が出来、テーブルでは人々が団らんを楽しむ。キックターゲットや1on1のサッカーが楽しめるコーナーもあり、小規模な会場ならではの楽しい空間が出来上がっていた。

 驚嘆するべきは、ごく普通の人々が大勢詰めかけていたことだ。当日はイングランド・プレミアリーグのマンチェスターシティがJ1の横浜F・マリノスとのプレシーズンマッチに臨んでいる。純粋なサッカーファンであればそちらに行くのだろうが、西が丘には「近所だからやってきた」「知り合いの選手を観に来た」「新宿で頑張っているクラブを応援しに来た」というクラブ、地域との関係性でクリアソンの試合を選び、お祭りのように楽しみに来た人々が多かった。

「Jリーグを観るならこういうしぐさをしなければならない」という、目に見えないルールを強いる古参サポーターの姿が目につくこともある既存Jクラブの試合とはまったく別個の世界がそこに拡がっていた。この空気感はクリアソンが国立で公式戦を開催した時にも感じられたが、狭い西が丘に来たことで、より縁日的な空気は濃く、熱量は高く感じられた。

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 この日の勝利で順位も3位に浮上。Jリーグ加盟に必要な2位以内まであと一歩と迫っている。J入りは目前と映るこの事態をどう感じたか訊ねると、丸山代表はこう答えた。

「2,000人を目標にやっていたので、その目標に近づけたという意味ではすごく手応えがある。日々選手たちが地域を回り、築いた関係性によって新宿を中心とした皆様に濃く集まっていただけた。最後、あの時間に点を獲れたのも、本当にその後押しが大きかったと思う。こういう空間を都心のど真ん中でもっともっとつくっていけるように頑張っていきたい」

 頑張ってる仲間を応援したい、新宿でやっているクリアソンの活動に共感したという方たちが来ている──という丸山代表。「西が丘を拠点として、ここでたくさんの賑わいをつくり、ぼくらのソフトコンテンツとしての価値がいろいろな都心のスタジアムに拡がっていくことをやっていきたい」と、今後のヴィジョンをあらためて認識していた。

 東京のいちエリアをホームタウンとするクラブが上位カテゴリーで活動することも出来ると、身をもって証明しつつあるクリアソン。その試みを、背中を追う関東リーグや東京都リーグのクラブが見つめている。そうした視線に、この西が丘の夜はひとつのモデルケースとして映ったにちがいない。
(後藤勝)

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