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写真:後半は押し込みながらもあと1点が奪えなかったエリース。写真は神田。

関東リーグニュース

エリース 盤上の理想を貫き、現実の球際も忘れず

写真:後半は押し込みながらもあと1点が奪えなかったエリース。写真は神田。

MATCH REPORT後藤 勝

<関東1部:エリース東京 1-1 桐蔭横浜大学FC>

 関東サッカーリーグ1部、エリース東京FCの第7節桐蔭横浜大学FC戦は1-1の引き分けに終わり、今シーズン3勝目はならなかった。桐蔭は前節、東京23FCに1-6の大敗。連敗を避けたい桐蔭と、複数得点で勝ちたいエリースとのしのぎ合いになったが、ともに決定打を繰り出すことが出来なかった。

 なんとしても負けたくないという意思のあらわれか、桐蔭は開始30秒ほどで先制点を決めた。浮き球が行き交うルーズボールの回収合戦となった前半キックオフ直後の時間帯、一瞬の間隙を縫うように桐蔭FW牧がエリース守備陣を割ってシュート。エリースにとってはこの失点が重くのしかかった。

 最初の失点を除けばエリースは平常運転。しっかりといい立ち位置をとってボールを動かし、FW松岡やMF神田が下がってボールを受けたり、あるいはそのふたりが背後を衝く動きをしたりして変化をつけた。継続的にチャンスを構築する作業はほぼノーミス。無得点かつ1失点ながら、悪くない内容で前半の45分間を終えた。

 試合が動いたのは後半だった。後半の前半はやや落ち着いたテンポになってしまったが、後半24分、左のワイドにFW色摩を投入すると一気に活性化した。この狙いを山口監督は次のように語った。

「ワイドのところで14番の長谷川慎梧はスペースはとれるが、しかし相手がマンツーで来ている以上は押し込みたい。あそこでボールを収め、相手のラインを押し下げて、ちょっと攻撃の時間を増やすというか、相手をある程度押し込んだ状態で崩しに行くほうがいいと。桐蔭横浜大学も疲労が来ていたので、そこである程度押し込む時間を増やそうと、ボールが収まる時間を入れていく意図だった」

 狙い通りに相手のラインが下がり、攻めやすくなったエリースは、MF村田が蹴った左コーナーキックをニアでFWソンが頭で決めて1-1の同点。なおも攻勢はつづいたが、自ら獲得したPKを後半41分に色摩が蹴ると相手GK高橋に止められ、こぼれ球をソンが撃つも左ポストに当たって万事休す。後半アディショナルタイムがなくなりかけたところで長いボールを蹴って早くフィニッシュに至ろうとするも時間切れ。49分30秒に決着した。

 戦況に応じた采配は当たっていたが「今シーズンはこういう試合が多い」「勝てたなという悔しさはもちろんある」と山口監督が言う結果に至るには、遠因がある。

 この桐蔭横浜大学戦も内容的にはほぼ完璧に近かったが、やはり試合開始直後の失点が玉に瑕。そのように、たとえいい試合をしていたとしても、対戦競技である以上は事故的なものも含めて毎試合1失点をする可能性はある。すると確実に勝つためには2得点を目標にしなければならないが、前節のヴェルフェ矢板戦につづき今節も1得点。チャンス構築数に対してゴール数が少ないという根本の原因が浮上してきている。

「我々への対策か、前半に点を獲りに来て後半に引くというパターンが確立してきているのかなとも思う。だからと言ってぼくらがボールを手放すことも基本的にはない。崩せているので、そこでもう1個崩す。もう1個ビルドアップの精度を高めて、意味のある攻撃を増やすというところに、もっともっとチャレンジしていかないと厳しいだろうなとは思う」

【写真】試合後に厳しい表情を見せる山口監督。

 現在開催されているUEFA EURO 2024で観られるようなモダンなフットボールと同質のものを追求しているエリースは、その意味でも貴重な存在。戦い方が確立するまでは内容に結果が見合わないケースも度々出てしまうことが予想されるが、ここでスタイルを放棄してしまってはもったいない。この日はウインガーの色摩、ストライカーのソンといった勝負強いタイプの投入によって敗戦を免れ勝点を奪ったが、このように盤上の理想を追求しつつも、現実の球際で優ることも忘れない姿勢で、結果を得ながら自分たちのフットボールを進化させていきたいところだ。
(後藤勝)

本能のストライカーソン、5試合6得点で得点ランク2位
【ハイライト】エリース東京 1-1 桐蔭横浜大学FC

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