写真：引き分けに終わり悔しさをにじませる東京23の小松監督ら。

MATCH REPORT後藤 勝

＜関東1部：エリース東京 1－1 東京23FC＞

　試合開始からわずか8分、エリース東京FCのMF神田に決められた先制点が響いた。前半28分には、反対に東京23FCのほうが中央で巧みに動きシュートコースを空けて1本のスルーパスから同点ゴールを決めただけに、最初の1失点がなければ勝利を得られたかもしれない一戦だった。

「立ち上がり、少し（相手のとりたい立ち位置を）ズラせなくてやらてしまったが、だんだん相手の形を見ながら相手に合わせに行くということは出来るようになり、前半の途中ぐらいからはそんなに決定機を作られていなかった」

　指揮官の小松監督がこう言うように、東京23は相手が攻撃時にいい立ち位置をとることを阻むようなポジショニングで対応していった。

　小松監督はつづけて「どこで人を捕まえに行くか、ここはスペースを守る、ここは人につきに行くと、それら整理はトレーニングでもやってきていた。前半はそこが1個ズレてやられてしまったが、それによって目が覚めた」とも。

　最初の時間帯では、間、間に立ち位置をとってエリースがおもしろいようにボールを動かし前進していたが、気がつくとエリースの神田を進入したいポケットの少し外側に追いやるように東京23の最終ラインが対応していた。これによって神田は直接シュートを撃てるコースが消されるような格好になった。

　互いにミドルゾーンで構え、ブロックを築いた状態で対峙する時間帯が長くなったのも道理かもしれない。小松監督は次のように分析した。

「暑さもあり、前から行くところと行かないところのメリハリをつけつつ、お互いの狙いを感じながらそうなったと思う。ただあまりプレーが切れない、すごく質の高いゲームにはなったのかな、と」

　保持して前進したいエリースと奪って攻めたい東京23という構図ではあったが、意図のあるプレーをするが故に、東京23がボールを保持して攻め、エリースが構えてカウンターを狙う立場にもなる。そうして息を殺すようにして隙をつくらず、バランスを崩さず、緊張感を漂わせて1-1のスコアのまま睨み合った。

　勝負をかけたのは最後の15分間。後半28分にMF近藤、FW神田（志樹）、MF小林を投入してパワーをかけ攻勢に出た。しかし何度となくチャンスをつくったがエリースの身体を張った守りによってついにゴールを割れず「選手たちの反応を見ても、勝ち点2を取り損ねた」（小松監督）引き分けに終わった。

　それでも終盤の猛攻はすさまじかった。「最後、相手がきつい時に自分らはもっと出れるし、トレーニングを強度高くやってきている。結果、2点目を獲れなかったが、この暑い中、声を枯らしてくれているサポーターに、自分たちが信じてやってきているところのアグレッシブさは見せられたと思う」と小松監督が言うハイインテンシティのプレーには、エリースの山口監督も驚嘆していた。

「相手は多分前半のメンバーでボールを動かしに動かして、ぼくらの足が止まった時に、9番と10番の選手（ソンと松岡）を入れ、7番の選手（神田）をワイドにして、そこで好き放題やるというゲームプランだったと思うが、それでも自分たちはそこで止まらなかったし、自分たちの時間を作れた」（小松監督）

　地力を高めてきているエリースは上位並みに脅威となる相手だったが、東京23がこの厳しいゲームで屈することなく自分たちのスタイルを表現したことは興味深い。最終順位を見る時、もしかするとこの試合は、楽勝する以上に価値のある引き分けだったと振り返ることになるのかもしれない。
【後藤勝】

・エリース、守備の向上示し価値あるドロー

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