TOKYO FOOTBALL

TOKYO FOOTBALL COLUMN

プロの厳しさと社会人の熱さ
「サッカーの深淵を見た10番の散り際」 後藤京介

後藤 勝 = 文 葛城 敦史 = 写真

初の社会人クラブへ「サッカーが好きな人たち」

2020シーズンは甲府からの期限付き移籍でJ3・いわてグルージャ盛岡で活躍するも、ローンの期間が終わると同時に甲府との契約が満了となり退団。翌2021シーズンはJFLへフィールドを移し、ラインメール青森で主力としてプレーすることとなった。JFLのクラブでありながらJリーグを目指す体制を整えていた青森への完全移籍によってプロ選手のキャリアを継続していたが、2022シーズンからは横河武蔵野FCに移り、初めて“社会人クラブ”に所属。そのなんたるかを知ることになる。

「『この人たちは本当にサッカーが好きなんだな』というのが第一印象ですね。アウェイゲームに行った日曜日の夜遅くに帰ってきて明朝の8時や9時に出社、会議という選手が多い。Jクラブだと月曜日はリカバリーに費やすことになるんですが、そこはやっぱり仕事なのだと……しかも家族がいるのに土日はサッカーをやっていたりするわけで、家庭も大変でしょうし」

インタビュー:後藤京介。

企業のサッカー部やアマチュアクラブが少なくなり、Jリーグをめざすクラブがほとんどを占める現在のJFLでは、夜に練習しているクラブは武蔵野くらいのもの。仕事をしたあと、夜に練習をするという環境の武蔵野が、プロ選手ばかりのチームに勝つことに意義があるというマインドで取り組むようになった。 その意味では武蔵野で4年めを迎えた2025年の今夏、国スポ関東予選に出場する東京選抜に参加したことも、後藤にとっては意義深いものだった。単独チームをその県の代表として出したほうが強いという考えが定着しているなか、東京都社会人サッカーリーグ、関東サッカーリーグ、そしてJFL(日本フットボールリーグ)からの選抜でオール東京を志した、まさに東京代表としての活動は楽しさすらおぼえるものだった。

「これは個人的な意見ですけど、今回東京選抜に参加させてもらってめちゃくちゃ良かったなと思っています。都1部の選手たちと真剣勝負の場で、いっしょのチームでやることは多分ないと思いますし。横河の選手もすごく熱心ですけど、彼ら以上にサッカーが好きなんだなと思えたくらいです。群馬で国スポ予選1週間前の合宿をした時にオレの話になって『京介くん、来年から月謝を払わないといけないですよ。それが都リーグで、趣味でサッカーをするということだから』という話もしてもらって。いままでの環境とは全然違う、そういう生き方、感覚に触れられたというのはすごく新鮮なことでした」

自分のスタイルが消えていく現代サッカー

思えば山あり谷ありのサッカー人生だった。大学で初めて大きなけがをしてボランチへの転向を模索し、Jクラブからのオファーがない状況でプロサッカー選手になるために欧州へと渡ることを決断。そこで獲得したプロとしてのマインドでJリーグデビューを果たし、そして現在はプロとは異なる世界観があることも知り、プロレベルでの引退を決断しても尚、サッカーのある暮らしに終わりがないことを感じている。

プレーの面で言えば、フットボール自体がボール保持を追求する戦い方から、高い強度でぶつかり合う戦い方へとそのトレンドを変えている。その荒波のような時期に、ボール扱いに長けた展開力のあるボランチとして、トレンドのひとつのサイクルをやりきっての引退という側面がある。ボールプレーヤーである後藤がモンテネグロでプレーしていた時代、フィジカルが強く球際に厳しい相手への対処法を確立し、ここまで生き延びてきたこと自体がすばらしいことだと言える。

「サッカーのスタイルが年々進化して、ぼくみたいなタイプが活きにくくなっていることは実感していました。上のカテゴリーですけど、柏木陽介選手が引退したのには、そういう理由もあると思うんですよ。中盤もアスリート能力がないといけなくて、球際はバチバチ行って、ドリブルで運べて足が速くて身体が強い、どちらかと言えばパスよりそっちの比重が大きくなっている。コロナ禍のあと交代枠が5人になり、その傾向が強くなった印象です。でも、そういうなかでも、ぼくみたいな選手がいてもいいなと思っています」

その生き様を示すべき秋になる。2025年かぎりで引退と考えると、9月の中断明けから残る試合は全体の1/3ほど。生の後藤京介を目撃出来る機会がそう多くはなく、みなに広く知ってもらいたいという想いから、夏に現役引退を発表した。そうまでして観てもらいたいものとは──。

最後まで左足を観てほしい

「地方から来てくださる人とか、応援していただいている人たちに自分が最後までサッカーをしている姿を見せたい、楽しくやっているところを見せたいと思っているんです。それと、後輩たちにも見せないといけない。サッカーに対する想いとか熱を、もっと表現していいんじゃないかとも思っています。あとは試合を観ている人に『あいつ巧いな』と思われながら辞めたい。『まだやれるじゃん』と言われながら辞めたいという気持ちがぼくのなかで大きくて、そういうプレーが出来ればいいと思っています。この段階になっても、まだまだ成長しているということを感じていますし、特に、自分の左足はずっと観ていてほしいと思っています」

インタビュー:後藤京介。

武蔵野をJFLに残留させることが、そのまま引退の手土産にもなる。引退という言葉に伴う悲壮感はなく、サッカーに熱中する明るさを発散させながら、後藤はサッカーとともに生きる人間の在り方を最大限に表現しようとしている。

後藤京介(横河武蔵野FC)

後藤 京介

東京都出身 33歳。三菱養和SCユース出身。専修大学卒業後にモンテネグロに渡り1部のFKモグレン、FKイスクラでプレー。2017年にJ3・Y.S.C.C.横浜へ加入し、2年目は主力として全試合フル出場の活躍。2019年よりJ2のヴァンフォーレ甲府へ完全移籍。同年7月にJ3 ・ザスパクサツ群馬へ期限付き移籍し、J2昇格に貢献。2020年はJ3・いわてグルージャ盛岡、2021年はJFL・ラインメール青森、2022年からは横河武蔵野FCでプレー。2025年8月に今季限りでの引退を発表した。身長178cm、体重73kg。

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