写真:前線でボールを追いかける武蔵野のFW小口。
MATCH REPORT後藤 勝
<JFL:横河武蔵野FC 1-2 いわてグルージャ盛岡>
キャプテン金田は「70分しか続かない」と反省
横河武蔵野FCにとっては悔しい敗戦だった。後半31分に1-1の同点とされるまでは、ほぼ掌中に収めていた勝利を逃し、その2分後にも失点して1-2の逆転負け。相手にPKを与えて同点にされ、自分たちはPKを決められずに同点にする機会を逃す。途中までうまくいっていたのに、対照的な結果に終わった。
グラウンダーでつながずに最終ラインから蹴って相手陣にボールを入れ、セカンドボールを回収して攻め立てる。守っては前から制限をかける程度に寄せ方を調節したプレスでいわてグルージャ盛岡のパスを誘導。パスをつないで相手に奪われるリスク、奪い切るプレッシャーをかけて剥がされるリスクを負わない設計で試合をコントロールしていた。ライン設定も絶妙。下げすぎると相手の攻撃に晒され、上げすぎると相手のスピードに負けて背後を衝かれる結果を招くところ、相手にスピードアップされても下がって間に合うと同時に、ある程度背後を消せる、そういうギリギリの低い位置に守備組織を構え、岩手の攻撃を跳ね返していた。
この、武蔵野のリズムで推移していた前半36分にスコアが動いた。相手の右スローインが競り合いの頭上を通過し、武蔵野の最終ラインが回収。MF鈴木(龍)からのボールをDF金が蹴ると、このロングパスがFW小口に渡る。小口は身体ごとさらにもう一歩ボールを前に持ち出すようにして右足でシュート、これをねじ込みチームの今季初ゴールを生んだ。
狙った形でペースを掌握するなかでの先制点。この1点を守り切るかに見えた武蔵野だったが、体力の低下とともに、設定した網に綻びが生じ始め、ついにはDFのハンドで岩手にPKを与えるに至った。しかしハンドをした選手を責めるわけにもいかない。遠因はチーム自体にあった。キャプテンのMF金田は敗因を次のように語った。
「ハンドを与えてしまったのはあの選手だったかもしれない。しかしチームとして甘さみたいなものが、どこか後半にはあったと思う。その雰囲気を締めきれなかったところが今回の敗因かなと思っている」開幕から3試合、90分間全体を通してはピンチがそう多いわけではない。むしろいい試合が出来ているが、瞬間、瞬間のプレーが甘く、それが失点を呼び敗戦につながっている。そしてその甘さは後半にあらわれている。前半は武蔵野のリズムで試合を運んでいた。
「体力面も関係しているが、前半の終わりから少し嵌まらなくなってきた部分もあった。もう一度前半の入りのように後半も行きたかったが、なかなかエネルギーが出せなかった。シュートを撃って終わるなど、流れを変える大胆なプレーが少なかったことが、後半に勢いを出せなかった要因かと思う」
金田のポジショニングはこのやり方に特化していた。長いボールを蹴ってそれを跳ね返された時にはそのセカンドボールを回収出来る位置にいて、自陣で味方がボールを奪った場合はそこからファーストパスを受けられる位置にいた。実際、フォワードのサポートやセカンドボールの回収は意識して臨んでいるという。そのようにチームとしても個人としてもやるべきことにトライして7割方の時間は遂行出来ているだけに、課題は明確だ。
「今、60分とか70分とかしか出来ていない部分が多い。それを90分間出来るようになれば結果は出てくると思う。ここでブレたらもう本当に意味がないと思うので、いいところはやり続けて、出来なかったところを練習の中で改善出来るようにやっていければいい」
90分間やり抜く。その強い意思のもと、金田と武蔵野は初勝利をめざし、顔を上げた。
(後藤勝)
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