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ピッチの余白

後藤 勝|# 05

歴史を大事にした日本平の塗装リフォーム
清水エスパルス

過日Jリーグ公式戦の取材でIAIスタジアム日本平を訪れ、記者会見室に入った瞬間、思わず「おっ」という驚きが口を衝いて出た。壁面が鮮やかな濃い青で塗りつぶされていたからだ。

この深みのある青は、清水エスパルスのチームカラーであるエスパルスオレンジに対するセカンドカラーのエスパルスディープシーブルー。建物の構造を変えるような大工事をせずとも、壁面を塗り替えただけでも大きく印象は変わる。Jリーグオリジナル10の一角を占め、創設から35年の歴史を積み重ねてきた清水の品格が感じられた。

写真:壁面が塗り替えられた記者会見室。

壁面が塗り替えられた記者会見室。

Jリーグとしても2026年は秋春制が始まる節目の年に当たるが、この移行期間に開催された明治安田J1百年構想リーグの前に、ロッカールームを含むスタジアム内諸室や廊下の再塗装工事を実施したという。

「指定管理のルールを確認し、施設所有者である静岡市とも必要な確認・調整を行ったうえで、原状復旧が可能な範囲で内装等の環境改善に取り組みました。年間を通して最も使用回数が多く、地元自治体との信頼関係もあり、塗装のリフォームに踏み切りました」

こう語るのは株式会社エスパルス ブランディング事業本部ホームタウン事業部(指定管理担当)課長の山田晃司さんだ。清水エスパルスはIAIスタジアム日本平を長年ホームスタジアムとして使用し、2016年からは指定管理者として施設管理を担ってきた。長年にわたりホームスタジアムとして使用するとともに、指定管理者として施設管理を担うなかで、施設の魅力や利便性を高めるための管理運営にも取り組んできた。

再塗装には建築物を保護し、その寿命を伸ばす効果もあるが、やはり新築のような美観を取り戻す効果が大きい。また、そこで働く人々のモチベーション高揚にもつながる。四半世紀以上の年月が経ち、クラブとしてエンブレムの変更を含むリブランディングをおこなってきている清水エスパルスだが、静岡県民、ファン・サポーターが愛するホームにしっかりと手を入れ、維持していこうとする様には、筋の通ったポリシーがあるようだ。

玄関には歴史を彩る名シーンの数々を刻んだ写真が貼られ、エントランスの床にはレイヤー画像としてこれまで用いてきた各種のデザインが織り込まれている。「過去の歴史をレガシーと捉え大事にする視点」(山田さん)があるのだ。

「1991年の全国高等学校総合体育大会(インターハイ)のために建設された競技場をホームスタジアムに──というのが発端でしたが、いまあるものを大事に使っていくことも必要だと思います。何でも新造、新築という時代ではないですよね」

こう語る山田さんの言葉を聞いて合点がいった。既にあるものを大切にしつつ受け継いでいく。愛着を捨てずに生まれ変わらせる。そういうクラブの心意気がにじむから、青く塗られた日本平に好ましさを覚えたのかもしれない。

スタジアムツアーなどに参加しないと見られないエリアではあるため、ここでは数枚の写真をご覧いただきその雰囲気を感じてもらいたいと思う。「企業チームが母体となっているJクラブが多いなか、エスパルスは清水市の市民球団として発足しています。めざすのは、他競技で言えば広島東洋カープのような存在です」と、山田さん。慎ましく堅実でありながら誇りと美しさを保ち続ける清水エスパルスの姿勢は、日本におけるフットボールクラブのお手本と言えるものになっていきそうな予感がする。

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