南葛、前半の姿勢を貫けず逆転負け 「もっと強気で」風間監督
写真:前半の南葛は相手ゴールへ向かって攻め続けた。
MATCH REPORT後藤 勝
<関東1部:南葛 1-2 VONDS>
前半45分間はVONDS市原にほとんどボールを渡さず、開始から終了まで徹底して攻め続けた南葛SC。相手に触らせることなくパスを繋ぎシュートまで行くことは既に南葛では当たり前のこととなっていて、その試行回数はとてつもなく多かった。そして、そのうちの一回が先制点に結びついた。
前半途中までに2度ほどPKではないかと疑われるシーンがあり、3度目の正直とでも言うように、前半32分、MF鍬田がボックスの左端で倒されたプレーがVONDS側のボックス内でのファウルと判定されPKを獲得。これを、PKに絶対の自信を持つMF佐々木が決め、南葛が1点をリードした。
しかし後半序盤の南葛はグラウンダーのショートパスを放棄したかのように長いボールを蹴っていた。もちろんVONDSもハーフタイムに修正して寄せを厳しくしてきたということはあったが、それだけでは説明がつかない失速ぶりだった。そしてまったく思い通りにいかない時間が続いていたかと思うと、後半8分に左コーナーキックから失点。1-1の振り出しに戻ってしまった。「なぜ前半出来ていたことが、後半は出来なくなったのか」と訊ねると、風間監督は次のように答えた。
「後半出来なくなったというより、(最初の)10分やらなかっただけ。10分間、自分たちが長いボールを使っただけ。少し、自分たちが落としてしまっただけ。そこは非常にもったいなかった」
風間監督の言葉は手もとの取材メモと一致していた。南葛側の欄には後半開始から10分間、記すべきイベントがなくほぼ空白。大前元紀が交代の準備をしていたが、その大前がピッチに入る前に南葛は失点してしまった。大前が入って以後は南葛もアクションを再開したものの、1失点を喫した流れの影響を脱しきれなかったのか、後半20分に左エリアのフリーキックから失点。セットプレーが得意なVONDSがやりやすいゲーム環境を、南葛は自らつくってしまっていた。
「前半はオレたちがやり続けていたから、相手は困っていた」と、風間監督は言う。相手を見ていれば、南葛が自分たちのスタイルを貫くからこそ、VONDSが何も出来なかったとわかるはず。しかし自分たち主体で物事を考えることを捨て、相手を脅威と感じて相手に合わせれば、ゲームの構図はひっくり返ってしまう。もしかすると、前半と後半でまったく反対の試合展開になったのは、この心理的な要因が大きいのかもしれない。
もともと風間監督は「ボールを保持する側が相手にプレッシャーを与えている」が持論。一般的にサッカーは、ボールホルダーが技術的に優位に立っている場合、守備側は相手の攻撃に振り回される劣位の存在になるもの。守備側が寄せて物理的に圧力をかけてくることを脅威と感じれば、ボール保持側が劣位になってしまうが、自分がボールを持つことを相手は嫌がっていると見抜いたのなら、堂々とボールを持って操れば、その保持側が優位になる。だから、風間サッカーを実践する上では、ボールを持ったら強い気持ちでプレーすることが正解になるはず。前半はその正解を突き進んでいた。
「すごく技術は上がっている。ただ、そのなかで全員が90分強気で攻め続けなければ。全員が(出力を)落としたわけではないのでね、非常にもったいなかったけれども、これを学んでいかないといけない。そこがポイントだと思う」
改善する事柄については「全員がもっと強気で行く、いままでやってきた技術を徹底的に高めていく。そのふたつだけ」と、風間監督。もう少し細かく言えば、前半に実行していた攻撃の質を高めていく過程で前で攻撃に関わる人数を増やしていくことも大切だが、大きな方針としてはそのふたつで十分だろう。
何度も自然などよめきと拍手が起こった前半45分間の南葛はすばらしいの一言。風間監督は「楽しんで帰ってくれたと思う。あとはこれをゴールに結びつけるだけ」と言っていたが、その通り、1年前に比べると進歩は明らかだ。前半の強い気持ちを捨てず、さらに質を追い求めることが、これからの南葛にとって重要なミッションになる。
(後藤勝)
関東サッカーリーグ
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